
タラ腹(ふく)食べよう
雪の振る頃に脂がのって美味しくなる魚に鱈(タラ)があります。
特に珍重されるのは白子で、これは精巣の部分です。形状が雲模様や菊模様をしている事から「雲腸(くもわた)」「雲子(くもこ)」「菊子(きくこ)」と呼ばれます。
北海道では「たち」、秋田では「だだみ」と呼ばれ、地域によって色々な呼び方があるそうです。
白子はビタミンDが非常に多く含まれています。ビタミンDの役割はカルシウムの吸収を補助するためで、ビタミンDが不足しているとカルシウムをたくさん摂取しても吸収が悪くなるとの事です。
鱈は食いしん坊な魚で何でも食べてしまいます。これは冬以外、深海に生息しているため、エサがなく食べられる時に腹一杯食べるためだそうです。「タラ腹(ふく)食う」という言葉はここからきたようです。

ひな祭りは春の訪れ
女の子の祭り「ひな祭り」が近づいてきました。
ひな祭りはもともと、川に入り体の穢れ(けがれ)を祓う日とされて「禊(みそぎ)」と言われていたそうです。それを紙人形にして川へ流す風習に変わり、「飾り雛」の形となったのは江戸時代の頃から
だったようです。
ひな祭りには菱餅を飾りますが菱餅の緑(よもぎ)は健康、赤(桃)は魔除け、白は清浄の意味があるそうです。菱餅を食べる習慣はあまり見られなくなりましたが、代わりに桜餅や草もちが食べられるようになったようです。
鍋メニューは2月末で終了いたしました。
日本一
節分を過ぎると、日よりも良くなってきた。お日様のやさしい日々が続くようになった。
「すみません、今日(きょう)は。急に団体さんが入って、ご協力、ありがとうございました。お昼ご飯も食べそこないましたね。申し訳ない」と、店長はキッチンのパートさんに頭を下げた。
ランチピークの終わった午後2時に入ってきた12名の団体さんの対応に一気に追われることになり、勤務が午後2時までのキッチンのパートさんに三拝九拝して延長勤務をお願いしたら、都合のつかない方が多く、お鮨を担当しているパートさんだけが残ってくれた。
団体のお客様は笑い声が絶えず、会社の小旅行の途中のようで、どなたかが話す度に、どっと笑い声が上がった。
注文は皆様同じで、お鮨、天ぷら、そば、茶わんむしがセットになった"さざんか"であったが、「できるだけ急いでお願いしたい」ということであった。店長もお席にご案内したあとキッチンに入り、天ぷらの盛り付けなどを助けた。
お鮨を担当したのは残ってくれたパートさんで、早い、きれい、うまいの3拍子がそろった、ランチピークに打ってつけの方でしたから、お会計の際にはお客様から「急がせて悪かったね。本当においしかったよ」「今度は家族を連れてきたいね」「お鮨、最高!」「天ぷらもね!」と、いろいろとおほめの言葉をいただきました。
お客様がお帰りになったあと、事務所には協力してくれたパートさんと店長だけだったので、「本当に助かりました。これ、口に合うかどうかわかりませんが、うちのかみさんが、この間のおみかんのお返しだって、手作りのクッキーなんです」と、小さな手付きの紙袋を差し出した。
「そんな、店長さん」と言って彼女はとても恐縮している表情をした。
「おいしかったですよ。息子さんがつくった、みかん。ちゃんとお母さんにお返ししているじゃありませんか」
彼女の息子さんは有名私立大学を卒業して大手銀行に勤めていたが、自分には向かない、と退職し、全国を放浪の末、今は和歌山のみかん農園に雇われている、ということは聞いていた。
「本当においしかったですか。肥料にこだわった有機栽培で日本一うまいみかんとか、私にはすっぱいばかりで…」と涙ぐんでいた。
「大丈夫。男はこれだ、と思ったらまっしぐらですからね」
「店長さん、聞いてください。昨日、その農園のお嬢さんという方から手紙が来て、実は息子と大学で一緒だった、というのです。心配しないように、と書いてありました」
「そう。じゃあ、今度、お母さんに会いに来る時は、そのお嬢さんと一緒かもしれませんね」と、店長は、きっとサプライズは起きると思い始めた。
「そんな店長さん…」彼女は手を振って、ありえないという顔をした。 すーっと流れた涙を手の甲でぬぐいながら笑いがこぼれた。
「いや。世の中わからないものです。人間、おさまるところにおさまるものです。息子さんが帰ってきたら、ぜひ、うちの店で、お母さんの腕を見せてやってください。お母さんの腕も日本一。私が保証します」
(世界の中心に愛がある、ということを信じている孤独な編集長より)
北海道お役立ちリンク集を更新しました。
もう一歩
午後9時、フロアー勤務を終えて事務所に戻ってきた、あとひと月もすれば入社3年目になる女子社員が、椅子に座りながら「はあ」と大きな溜め息をついた。
「どうした?」パソコンの手を停めて、店長が声を掛けた。
20歳の彼女が、クスンと鼻をすすったので、「風邪でも引いたか」と聞くと、椅子に座って、両手をひざの上に置き、肩を落としている。
「何かあったか?」
「私、自信なくなりました」
「なんで? 今、フロアーは君がいるから、フロアー全体が明るくて、良い雰囲気になっているんだよ。それが自信ないっておかしいだろう」
「はい。今、お客様からお叱りを受けたのです。中間下げ膳をしていてお済みでしたら、お下げします、とお声を掛けたのです。そうしたら、お客様から『私はまだ食べている。4人で来ていて、一人でも食事をしていれば、下げ膳は待つものだよ。ものにはタイミングってものがあるんだ。ですから、下げて良いかどうか聞いているでしょ? ということにはならないんだ。君がお客の立場ならどうだ?』と言われました。私はお済みだと思ったのです」
「今までそうやってきて、そのように厳しくお叱りを受けたことはない。なぜか、くやしい?」
「はい」下を向いたままの彼女。
「お客様にはいろいろな方がいらっしゃる。今まではそれで、はいどうぞとか、まだです、と言ってくださったかもしれない。でも今日、君が応対したような厳しいお客様もいらっしゃるものだ、という慰め方はしない。そのお客様は初めてご来店のお客様ではないだろう?」と店長は問いかけた。
彼女はまだ、うつむき加減で「はい。月に2、3度はいらっしゃっています」と答える。
「そうだろう。前はそれで良かった。しかし、今日は違った。だから、君は余計に心が揺れた。むしろ、お客様とは信頼関係ができつつあったのに」
「はい」彼女は顔を上げて店長の顔を見た。
「お客様は、君を信頼しているからこそ、君に言ったんだ。もう一歩深くお客様の立場になれ、と。お客様を本当によく見ていれば、どのタイミングでいけば良いか、そして言えば良いか、と君に教え、君に気づいてほしかったのだと思う。違うだろうか」
「……」
「同じお客様でもご一緒されている方や、どういうお食事会なのかということでも違う。接客サービスは、これで良いというものはない。技術だけでなく、心も求められるからね。常にベストを尽くすだけだ。それで心が届かなければ、そういう自分にくやしがれば良い」
何かピンときたように、彼女はこぼれた涙を人差し指でぬぐって、真顔になっていた。
「帰ります。店長」という彼女のいつもより張りのある声に、店長は安心しつつも「これからまだまだ、涙が出ることはたくさんある。くやし涙も、うれし涙も、自分に歯がゆい涙も、いろんな涙がある。どれだけたくさんの色の涙を流したかで、人はより強くも、よりやさしくもなれるんだ」と声を掛けた。
「わかりました。店長。これからも自分に足りないものをお客様が言ってくださるのですよね」
「そう思わなくちゃ、この世界だけでなく、仲間や家族とだって、どんな世界だって生きてはいけないよ」
「はい。もう一歩深く、ですね。わかりました」彼女はしっかりと椅子から立った。
「そう、いつももう一歩。やっと笑ってくれたな。お疲れ様」
(世界の中心に愛がある、ということを信じている孤独な編集長より)
磨き屋
出勤途中、散り始めた梅を見ながら、つくづく関東の春の早さを思う。
札幌の大学を卒業して関東の店舗に勤務して4年目を迎えようとする彼。千葉から神奈川の店に異動になって1年が過ぎようとしていた。
お店に出勤して更衣室でフロアーの仕事着に着替える。2カ月前にキッチンからフロアーの仕事に移った。着替えて姿見の鏡に映った全身を上から順に目線を下げていくことを習慣にしているが、まず髪の形をチェックする。
次にワイシャツの両方の襟の先を親指と中指でつまんでピンと伸ばし、ネクタイをきちっと締め上げ、ズボンの太もものちりを払うように両手の指でササッと払い、今度は後ろ向きになって、首だけを鏡に回し、後ろ姿全体をチェックする。
そして前を向いて笑顔。「練習した分だけしか結果は出ない」とスポーツ選手がよく言う。彼もそう思っている。もう一度、笑顔!
靴をはく前に、手にとって靴の底までチェックをしてから、きれいに磨かれているか、靴の踵(かかと)は減り過ぎていないか、それから、おもむろに踵(かかと)が折れないように、靴べらを使ってきちんとはく。(靴の踵の折れじわはお客様の食欲を失わせる…)とつぶやく。
ステーションに貼ってある接客六大用語を、お客様を想像しながら一語一語噛みしめるようにゆっくりと心を込めて発声する。(これも練習…)
その後、入念に手を洗って、フロアーに出る。彼はフロアーに出ていく前に決まって一礼をするが、そこには空手や柔道、剣道の試合の始まりのような、ピーンと張り詰めたものがあった。
オープン前の静かなフロアーを見渡しながら、右に左にと目を動かしながら、何か異変がないか、たとえば、壁に貼ってあるポスターが真っすぐ貼られているか、テーブル上のスタンドメニューがきちんと置かれているか、紙ナプキン、スティックシュガー、爪楊枝などは量も確認しながら見て行き、玄関を出る。
すでに清掃が終わっている駐車場をいくぶん早足で見て歩き、特に風のある日は角々で足を止め、ゴミがあれば、ポケットに忍ばせておいたビニール袋に入れて回収する。玄関に戻って、表側から玄関を見回し、ガラス面に汚れが残っていないかチェックをする。特に取っ手付近の指紋があれば、中側、表側ともにしっかりと拭き取る。何もなくても、から拭きをしておく。ウエーティングルームでは椅子に座ってみて、特に目が行く天井を入念に見る。
そして、トイレに入る。洗面台が濡れていないか、便器、床をチェックする。洗面台は汚れていなくても、改めて、から拭きをする。まれに清掃用具入れのドアを開けて見るお客様がいらっしゃるのでここもチェックをする。(整理整頓…)と頭の中にこの4文字の漢字を浮かべる。
最後に手をしっかり洗って、水気は残さないように拭き取る。トイレ点検を終えてフロアーに出ると、間もなくオープン時間。お客様を迎える準備はできた。
キッチンにいた3年間も、彼は「磨き屋」と言われるほど、少しの時間でもあれば鍋や調理台をぴかぴかに磨いていた。
彼の心に浮かぶのは、彼の兄からの1枚の葉書。高校卒業と同時にフランス料理のコックになる、と札幌から東京に出て行った兄。6年ほど音信不通だった兄から届いたセーヌ川とノートルダム寺院の絵葉書。もう黄ばんできているが、大切にしている絵葉書に書いてあった言葉。「パリに来て3年になるが、朝から晩まで、俺のやっていることは、鍋と調理場磨きだけ。それだけでも俺は強くなったと思う」
(世界の中心に愛がある、ということを信じている孤独な編集長より)
メニューに「苺」を追加しました
ひなまつり
ひな祭りソングの「あかりをつけましょ ぼんぼりに」で始まる歌の題名は『うれしいひな祭り』で、山野三郎作詞となっています。山野三郎は詩人サトウハチローさんの変名の一つと言われています。クリスマスソングの「ジングルベルジングルベル すずがなる」という歌の作詞者は、埼玉県羽生市に在住していた詩人・宮澤章二さんが作詞したもので、詩人が広く大衆に歌われる歌をつくっていたのでした。
とんでんでは社員の昇進過程の中で、新入社員で店舗に配属され、数年経って異動で他の店に移り、そこでチーフになって、また、別の店に店長で最初に配属された店舗に戻るということもあります。
3月1日の定期異動で、最初に配属された店舗に6年振りに店長で戻ってきた彼。8年前、共に仕事をしていたキッチン、フロアーのパートさんはすっかりベテランの域(いき)に入っていて、懐かしさもあったが、「立派になって戻ってきたね。うれしい」とほめてくれて、照れくさかった。
店長として3日目、ひな祭りの日。この日は、たまたま土曜日で、ランチは小さいお子様たちを連れたご家族が多く来店された。
ランチのピークは満席でごった返し、ウエーティングルームで待つお客様もあふれるほどでした。店長もフロアーで指揮を取りながらも接客サービスのフォローをこまごまとおこなっていた。
ピンポーン、とお客様がお呼びの合図音が鳴った。フロアーにはたまたま誰もいなく、店長が「はい。ただ今、お伺い致します」とテーブルに行くと、「お水をください」とお子様のグラスを持ってお願いされた。
2~3歳の女のお子様が可愛い着物姿で、エプロンをして、おじいちゃん、おばあちゃんもご一緒に楽しそうに三世代でお食事をされていた。 お子様の口のまわりや手を拭いたのか、おしぼりが汚れていた。グラスも汚れていたので店長はウォーターステーションに戻り、お子様のお水だけでなく、新しくお茶もいれて持って行き、すべて取り替えて差し上げた。そして、「おしぼりもお取り替えします」と言って取り替えて、「ごゆっくり、どうぞ」とお客様の目を見た途端、若い奥様が「店長さんは前にこの店にいましたよね」と声を掛けてきた。
「はい、8年前、新入社員でこの店に配属され、2年間おりました」と店長。
「おかあさん、やっぱり、そうだったでしょう」と、若い奥様はおばあちゃんの顔を見て、にっこりほほ笑んだ。
「店長さんになったんだ。おめでとう」と言ってくださったのはおじいちゃんだった。彼はめまいがするほど猛スピードで過去をさかのぼってみた。そして思い出し、「あの時のお客様でいらっしゃいますね。その節は大変ご迷惑をお掛けしました」と、改めて深々と頭を下げた。
彼が初めて、フロアーに出て、お食事をワゴンでお席に運び、いざテーブルに載せようとしたものの緊張のあまり手をすべらせ、お盆に載っている料理を全部落としてしまい、お客様の洋服まで汚してしまったことをまざまざと思い出した。
当時の店長も平謝りで対応し、彼がおろおろしていると「落ち着きなさい。私は大丈夫だから」と、やさしく声を掛けてくれたのはあれから7年過ぎておじいちゃんになっている方でした。あの日、お帰りになる際も、謝罪する彼に「大丈夫だよ。がんばんなさい」と励ましてくれたことがあったのでした。
「あの時、私もいたのよ」と若い奥様。「まだ独身でしたけどね。店長さんは、結婚は?」
「はい。私もお陰様で結婚致しました。今日か明日にも子供が生まれそうなのです」
「あら、おめでとうございます」と若い奥様とおばあちゃんの声がご一緒でした。
店長は、ほほ笑みいっぱいに「ごゆっくりどうぞ。本当にあの節は、励みになりました」とお礼を述べて下がった。
その日のディナーでは、見覚えのある三姉妹のお客様がご家族一緒に10名様で来店され、店長の彼が気づいた。フロアー係がご案内のあと、お席に行って「いらっしゃいませ。お久し振りでございます。この度、店長で戻って参りました。どうぞ、よろしくお願い致します」としっかり挨拶をした。
「本当にお久し振りね。おぼえていてくださってうれしいわ。3月3日は私達姉妹、必ず、ここで食事をすることに決めているのよ。あの頃は3人だけの食事だったけれど、今はごらんのように家族も増えました」と長女と思われるお客様。
「ありがとうございます。お変わりございませんね」
「はい。ありがとう。私達、上のふたりは結婚したけれど、末の妹がまだなの。店長さんは、ご結婚は?」
今日、二度目のご質問でした。
「今日か明日にも子供が生まれそうなのです」
「あら、それは残念、じゃなくて、おめでとうございます、ですね」とお3人様、一瞬笑い声が大きくなりましたが、口をおさえて、皆様、あとは小声で「よろしく。頑張って」とおっしゃっていただけました。
再び、店長の彼がフロアーをすべて見渡せる位置に戻り、フロアー全体を見回していると、ピンポーンと鳴った。「はい。ただ今、お伺い致します」とお席に向かっていく通路でお帰りになるお客様と交差する。「ありがとうございました」とお辞儀をして、気づくと、抱っこされたお子さんとお母さんが小さな声で歌っていた。「お花をあげましょ 桃の花 五人ばやしの笛太鼓 今日はたのしいひな祭り~」と歌いながら出口へと遠去かっていく。ほのぼのとした絵本のような母子の姿をお見送りした。
その夜、彼は店から真っ直ぐ、奥さんが入院する産科を訪ねた。そして、真夜中から初めての出産に立ち合い、奥さんの手を握りながら、「がんばれ」「がんばれ」と励ましつづけ、朝方、元気な女の子の産声(うぶごえ)を聞いた。
(世界の中心に愛がある、ということを信じている孤独な編集長より)