落ち葉が歩道に多くなってくるようになりました。お店の前の歩道をオープン前に清掃をすることにこだわったチーフがいたという伝説の話です。 最初は店長から指示をされて清掃を始めたのですが、店長から「トイレ清掃もそうだが、清掃をすると何がいいって、いつしか自分の心が洗われる自浄効果っていうか、言ってみれば清掃道みたいな、そういう境地に入っていくと清掃がやめられなくなるよ」と教えられたが、半信半疑だった。 お店の前の歩道を清掃していると、知らない方ばかりが通るのではなく、地域のお客様も通り、声を掛けてくださる。 「おはようございます」と声を掛けられ、地面から目を上げ、声を掛けていただいた方の顔を見ると、ランチばかりでなくディナーでもご家族でご利用していただく奥様だったりします。 「ご苦労様。毎日、雨の日も風の日も、感心するわ」と奥様。 「とんでもございません。仕事ですから」とチーフは頭を下げる。 「仕事ね。そうね。仕事であっても、通る人は、あなたを見るわ。毎日のようにね。あなたでない人であれば、今日はあなたがお休みなんだなあと思う。あなたにサービスをしてもらおうとする人は、あなたが清掃している日にお店に行くと思うわ」 「ええ、そんなふうに思わないでください。私が公休の日でも、みんな、心からのおもてなしを心がけて、お客様にサービスをしておりますので、いつでもご利用ください」とチーフは再び頭を下げた。 「そうね。でも、歩道を毎日のように、きれいに清掃するあなたの、そのあなたのサービスを受けたいと思う人は、私ばかりではないと思う。あなたの歩道清掃のお陰で、この道を気持ちよく通れるの。ありがとう」 チーフはまた頭が下がった。お礼を言いたいのはこちらのほうです、と心の中で思いながら。そして、店長が言っていた意味が少しわかったような気がした。心の底から笑みがこぼれてきて、うれしく思った。ちょっぴり感動の涙も。「さあ、今日もがんばろう。お客様のために」とチーフは、秋の澄んだ青空を見上げながら、こぶしで目をぬぐった。