事務所の電話当番さんからの内線ベル音で受話器を取ると、 「名前をおっしゃらないのですが、つないでくれ、とおっしゃっているので、よろしいですか」 と、おそるおそる話し掛けてきました。 どなただろうと思いながら、電話をつないでもらい 「お待たせしました」と、電話に出ると 「私です」と特徴的なだみ声。 自宅の裏のお屋敷に住まわれる、私の中の“ご隠居”さんです。 「注文です」と、すぐに用件を話されました。 「はい。ありがとうございます。お受けします。どうぞ」と私。 「海鮮巻3本、かつ巻2本、恵方巻2本、お願い」 「承知しました。お届けは去年同様、節分の2月3日、私が帰る6時前後のお届けでよろしいですか」とおたずねしました。 「それで結構。よろしく」 「ありがとうございます」と受話器を置きながら、何やら、心の底から、あたたかなうれしさが湧いて出てくる思いでした。 恵方巻のご注文だっただけに、歌舞伎の好きな私はお嬢吉三(おじょうきちざ)の名セリフを思い出し、満面の笑顔で「こいつぁ春から縁起が良いわい」と、へたな見栄を切っている私自身を想像して、笑ってしまいました。 去年の節分のあと、“ご隠居”さんとお会いした時には、「いやあ。一本丸かじりは大変だったよ」とおっしゃっていたので、今年はよしたのかなと思っていたところの電話でのご注文で、とてもありがたく感じました。 ただ、去年と違うのはご注文に「恵方かつ巻2本」があったことで、おそらく今年受験のお孫さんがお二人いらっしゃるのだろうと、これもまた、ほほえましく思いました。 今年の恵方は南南東で、あたたかそうな方角。そちらを向いて、手を合わせ、“ご隠居”さんご一家の幸せをお祈り致しました。 翌日、お昼に、農作業スタイルの“ご隠居”さんから「おーい」と声を掛けていただいたので、「昨日はご注文、ありがとうございました」とお礼を申し上げたら、「自分の分、頼むの忘れていた。かつ巻1本追加たのむよ」と、またまたうれしいお話をいただきました。 2月3日の節分まで、あと10日余りですが、とんでんでは味自慢の「恵方巻」のご予約を全店で承っております。