秋雨の関東に金木犀(きんもくせい)の香りが漂っています。  筆者は海のない街、北海道の旭川で育った。海が近くになくても市場が発展していたのだろう、魚は年中おいしいものが食べられた。 秋になると、北海道の魚は脂がのってくる。ひと口、口にほお張ると、何とも言えないうまさで、舌も、脳も、ハートにもしびれがまわる。  秋ならではのおいしさに目は大きく開き、やがて、ほほがゆるんでくる。 にんまりして、それから、やっと息ができたかのように「うんまい!」と、言わずにいられない。そして、家族のみんなの目と目が合い、しあわせの確認をするようにうなずき合い、あとはまた、ひたすら目の前のごちそうの虜(とりこ)になっている。 父は製紙工場労働者で、3交替勤務制だった。7時-15時、15時-23時、23時-翌朝7時勤務を1週間くらいで交替勤務していた。お酒が飲めた人なので、朝7時に帰ってきても、朝から寝酒のように、母が用意した季節の魚を肴(さかな)にコップで2杯くらい飲んだ。 秋の魚は何を食べてもおいしく、小学生の私達兄弟は、私達のおかずとは別の、父の肴がおいしそうで、横目でちらちら見ながら、母に「学校、学校」とせき立てられながら、すった長芋をご飯にかけて、ずるずるとかき込む。 日高の軽く焼いた柳葉魚(ししゃも)は焼くと特に香ばしい香りで、匂いだけで我慢するのは子供にはとっても無理なことだった。 母は焼いたそばから、熱々の柳葉魚を皿に盛って父の前に出す。父は柳葉魚のしっぽを指先でつまんで、頭からがぶりとかじり、はふはふ言いながら食べ、お酒をごくりと飲む。にんまりと笑って、残りの柳葉魚を口の中にほうり込む。それから指先をなめ、もぐもぐ噛みながら、またコップをつかむ。 私達兄弟は一瞬、呆然と父の様子に見入っている。そうすると、父は私達が持っている茶碗の上に、柳葉魚を1本ずつ載せてくれる。 そして、「母さん、悪いけど、ししゃも、もう少し焼いてくれや」と笑いながら言う。私達兄弟はうれしさも噛みしめながら、旬の柳葉魚のおいしさを味わう。うまい!  母は黙って台所に戻り、柳葉魚を焼く。また、柳葉魚の香ばしい香りが 流れてくる。父は少し酔いの回った口調で「遅れるぞ」と私達をせかした。  とんでんの関東本部事務所には北海道出身者が多い。当然、北海道弁が飛び交うことがある。 「いやあ、今回はたまげた」 「何がさ」 「生のししゃも、メニューに入ったんだ。十勝の海の近くの出身だけど生のししゃもは食べたことがなかった。いやあ、たまげた」 ということで、ただ今、とんでんでは、北海道にいてもなかなか目にもできないし、生で食べることもまれな北海道産「生ししゃも」を和食レストランとんでん全店で召し上がることができます。 生ししゃもの刺身、お鮨、天ぷら、焼き物、骨せんべいのお料理をお楽しみいただけます。期間限定、この10月が漁の最盛期です。  急ぎ、お知らせ致します。