今年の夏の暑さは異常です。とにかく暑い。史上最高気温を塗り替えたところも多い。朝も日が昇り始めたら、ぐんぐん気温が上がっていきます。 8月のお盆を過ぎた日のこと、午前11時をちょっと過ぎたころに福島ナンバーの車がお店の駐車場に入ってきた。お店の玄関が開くと蝉の鳴き声の合奏も入ってくる。み~ん、み~ん、み~ん、みぃ~ん……。

 25歳前後の若いカップルのお客様であった。「いらっしゃいませ」とパートさんがお迎えすると、「あらっ」と女性のお客様が明るくほほ笑んだ。パートさんも声には出さなかったが、あらっという顔になった。「去年、いましたよね」とお客様が言う。

「はい。おりました。今日はお早いんですね」とお聞きすると、「お昼を過ぎると混むと思って、今朝6時半に出てきました。少しロングなドライブです」と笑う。

「それはお疲れでしょう。お席にご案内いたします」とパートさん。

「暑いのですが、エアコンが余り近くない席にしてください」とおなかをなでる。「7カ月なんです」と女性のお客様。うれしそうだ。

「ぼくたち、去年の暮れに結婚したんです」と男性のお客様。「そうだ。33卓あいていたらお願いします」と続ける。「去年と同じ席?」と若い奥様が若いご主人に言って、ご主人の腕に手をからめる。「うん。今年は3人だね」とご主人も奥様のおなかを見ておだやかに笑う。

 お席にご案内して、「本日のおすすめは生さんまでございます」とご紹介すると、奥様が「去年は生のいわしを食べたの。おいしかったわ。生さんまも楽しみね」とご主人の顔を見て言う。幸せそうだ。

 いったん下がって、おしぼりと、お茶だけでなくお冷やもお持ちしたパートさん。「うれしい。のどが乾いていたところなの」と奥様が言ってお二人で、お冷やグラスで乾杯をしている。

 ご主人がフロアーのパートさんに言う。 「去年、この席でプロポーズをしたんです。ここは一生、忘れられないお店、そして33卓です」