12月に入ると、夜風が身にしみてくる日もあり、道端に落ち葉が固まっていると、寒そうに身を寄せ合っているように思えます。

 50を過ぎると、子供たちも独立して、元の夫婦二人きりになってしまう、ということはよくあることです。

 二人きりのうちの片方の奥様が、すき間でも見つけたように、たまたま友達と旅行に出かけてしまった日などは、会社の勤務時間が終わっても、早くから家にひとりで帰ってもしようがないので、ふだんやれていない書類の整理をし始めたりする孤独な管理職さんはこの世の中にたくさんいらっしゃいます。

 それもついつい深みにはまって、気が付いたら、事務所には誰もいなくなるほど遅くなってしまうことも…。

 夕食ではなく、夜食に近いくらいになって、今さらコンビニで酒のつまみを買って帰るのも面倒で、いつだったかも、やはり、奥様が実家に母親の介護でいなくて、残業で遅くなって行ったことがある、帰宅の通り道の和食レストランとんでんに寄ってみた。
 夜の10時近いこともあって、外から見るとお客も少ない。おそるおそるドアを開けると、前に行った時と同じ、フロアーの女性が「いらっしゃませ」と、にっこり立っていた。そして「お久しぶりでございます」と。

 そう言われて、(あれぇ~おぼえていてくれたのか…)と、どきどきしてきた。席に座って、出されたお茶を飲むとなぜか少し手がふるえた。お鮨と茶碗蒸しのセットを注文する。おなかが空いているのは一番のごちそう、と言われるが、本当にそう思う。やさしい声で「ごゆっくりどうぞ」と出された遅い夕食のお鮨もおいしかったし、茶碗蒸しも温かく、やわらかめで、これがまた口に合う。
 食べ終わったころ、彼女が来て下げ膳をしてくれて、温かいお茶を持ってきてくれた。これもおいしかった。レジで会計を済ませ、お釣銭をもらうと、彼女は「ありがとうございました。またお越しくださいませ」と言う。その時に目が合った。また、来ますよと、目で返してしまった、ように思う。外に出ると、星がやけにきれいに見えた。

 ただ、それだけの話です…と、そんな話をお客様から聞かせていただいたことがあります。

(世界の中心に愛がある、ということを信じている孤独な編集長より)